【サスティナブルな社会科見学】3世代先の森林を守る山守の仕事。循環する木の物語--vol.1

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奈良県吉野郡吉野町。大阪から電車で2時間半ほどで来られるこのまちは、縦に長い奈良県の真ん中より少し上。吉野川が流れ、深い緑に包まれたまち。下千本、中千本、上千本、奥千本と時間差で咲いてゆく桜が有名で、折しも訪れたのは桜の季節。

都心では満開だった桜も、ここようやく下千本から見事な花を咲かはじめた頃だった。ここに来た目的の一つは、森林の番人ともいえる「山守」に会って循環する木の物語を知ること。さて、まずは深い山を探索してみよう。

■山のこと、木のこと、吉野のことを伝えたい

雨の後の湿った大地。苔の緑がいっそう鮮やかに見える深い山林に私たちは入らせてもらった。案内人は中神木材の中井章太さん。そう、この人こそが私たちが会いたかった「山守」なのだ。

山守という職業をご存知だろうか。歴史は500年以上という吉野林業。吉野の地のほとんどを覆う森林の、不在所有者にかわって森林の管理や保護をするのが山守たちである。かつて沢山いた山守も、いまや吉野郡で50人程度だという。

山守は世襲制で、中井さんはなんと7代目。吉野木材の生産事業を営むかたわら、家具やまな板などの吉野木材をつかった商品を開発したり、「山守モニターツアー」などを開催するなど山守の仕事や吉野の木のよさを伝えている。

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吉野の山

■100年の年月、手間を惜しまない吉野林業

「このあたりの木でようやく樹齢40年ほど。まだ細いでしょ。吉野の林業は1ヘクタールに1万2000本という、他地域の3倍程にもなる密植で、間伐の回数を多くするんです。そうすると年輪が緻密で揃った木がまっすぐ伸びるんです」

間伐とは木が茂りすぎるのを防ぐために間引いていく作業だ。この「よい木」を見極めてその他の木を間伐していくのが山守の仕事の一つ。木が育って切り出されるまでの100年ほどの間に10回程度の間伐を行うという。

■3代先へ、森林を残す仕事

「僕らがやっているのは、3世代先の森林をつくることなんです。いま見ている樹齢40年の木もあと50年は成長させないといけない。でも、次に繋げる心がないと仕事が粗くなるんです。雪が積もって曲がった木をロープで元の位置に戻す『木おこし』という作業があるのですが、そんなことしないで諦めて切ってしまえばラクでしょ。でもそうすると残った木はまっすぐキレイに育たない。粗い仕事をしたツケは将来に返ってくるものなんです」

この考えは、他にも通じるという。今さえよければいいということを続けていると、いつかの世代には絶対にツケがまわってくるもの。大切なのは次につなげる心。中井さんは何度も「三世代先」という言葉を口にしていた。

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かつて林業の合間に山守たちが休憩を取っていた場所

■命をもらう、山の神様に感謝する心

最後に、林業で使う「ヨキ」を見せてもらった。いわゆる木を切る斧で、昔はこれだけで切っていたという。3本の線は「ミキ」=御神酒を表し、裏側にある4本線は「ヨキ=太陽、土、水、空気の4つの気」を表すという。

「山入りの最初の日に御神酒をお供えするでしょ。毎日は無理やからこのヨキの印が『御神酒』になる。今はこの線が入っていない斧もあるんですよ。木の命を切るという仕事やからね、ちゃんとそれを分かっていないと大きな災害が起ったりするんです」

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中井さんが使う「ヨキ」


命ある木、そこに宿る神様。山の神様に感謝しながら3世代先のために山を守ってゆく山守という仕事は、神々しくもある。

次回は切り出された木たちが向かう原木市場から製材所へ、木の行方を辿っていく。

【中神木材】
奈良県吉野郡吉野町西谷988-1
http://purewoods.com/

《和田安代》

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