構想10年、杉本博司の集大成となる「小田原文化財団 江之浦測候所」に込められた想いとは――

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現代美術作家の杉本博司が構想し、10年の歳月をかけて建設を進めてきた文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」が今年の10月9日に開館し、一般公開がスタートする。ギャラリー棟、野外舞台、茶室などを備えた「江之浦測候所」が、相模湾に臨んだ江之浦の地に新設された理由や開館に寄せた杉本博司の想いなどから、その見どころに迫ろう。

ニューヨークを拠点に、写真家、建築家、演出家として活躍する杉本博司が、なぜ小田原に自らのアーティスト活動の集大成とも呼べる作品「江之浦測候所」を造ったのか。小田原を選んだ理由として、杉本は「子供の頃、旧東海道線を走る湘南電車から見た海景が、私の人としての最初の記憶です。熱海から小田原へ向かう列車がトンネルを抜け、その先に広がる大海原の景色に魅了されました。それで、日本神話の舞台であり、私の最初の“記憶の場所”である小田原から、日本文化の精髄を発信しようと企てたわけです」と語る。

この記憶が「江之浦測候所」建設のコンセプトとなり、ユニークな施設の誕生を支える発端となる。杉本は、元は蜜柑畑であった小田原江之浦地区に3,000坪の土地を購入し、自らが敷地全体を設計したアート作品の建設を始めたのだという。この「江之浦測候所」には、東京の根津美術館から寄贈・再建された「明月門」に始まり、冬至の朝に相模湾から昇る陽光に照らし出される「光学硝子舞台」、夏至光観測の展望スペースを備えた「夏至光遥拝100メートルギャラリー」、江戸城石垣に使われていた巨石を据えて造った「石舞台」、千利休作と伝えられる「待庵」に着想を得た茶室「雨聴天」など、趣向を凝らした建築物に加え、杉本が全国各地から収集した名石で造られた庭園も備えられている。

自然の景観とアートが一体となった「江之浦測候所」は、その名にもある通り、測候施設としての役割も持っている。冬至は「光学硝子舞台」、夏至は「夏至光遥拝100メートルギャラリー」、春分と秋分の日は、石橋の軸線が相模湾から昇る朝日の軸線に合わせて設定された「石舞台」が、それぞれ、杉本の意図する施設本来の役割を発揮する。太陽の光を拝みながら、そこで演じられる舞を鑑賞するなど、「江之浦測候所」の見どころは四季折々にあり、古代人がそうしていたように“天空のうちにある自身の場を確認する”体験ができるだろう。

【イベント情報】
小田原文化財団 江之浦測候所
会期: 2017年10月9日オープン(7月20日よりhttp://www.odawara-af.comで一般予約開始、完全予約制) 
住所:神奈川県小田原市江之浦362番地1
時間:4月~10月 1日3回/10時・13時・16時(約2時間・定員/入替制)、11月~3月 1日2回/11時・14時(約2時間・定員/入替制)
料金:3,000円(施設の特性と安全性を考慮し、中学生未満の来館は認めず)
休館日:水曜日

《辻あい子》

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