ベルリンの歴史ある建造物の行く末--旧ユダヤ人女学校の場合【A trip to Berlin】

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元◯◯という肩書を持つ場所が、ベルリンには非常に多い。古いものを一掃し、ビルを建てまくっている東京とは対照的に、築年数で言えば100年を超える建造物を利用した文化施設、ホテル、ミュージックスポットなどがクールで文化的ともてはやされている。数奇な運命を歩んできた都市の歴史と最先端のカルチャーが一元化される、唯一無二の空間に足を踏み入れた。

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Ehemalige Judische Madchenschule の外観


訪れたのはベルリンの中心部・ミッテ地区、ギャラリーが集うオウグスト通り。旧東ベルリンに位置するこの場所に、旧ユダヤ人女学校を利用し、2012年にオープンした複合施設「エーマリゲ ユーディッシェ メッチェンシューレ(Ehemalige Judische Madchenschule)」がある。1930年にユダヤ人女学校として開かれ、ヒトラー率いるナチス党のユダヤ人迫害の影響により1942年に閉鎖。その後、軍人病院として機能し、戦争が終わると1996年まで職業中等学校として使われていた建物を再利用した場所だ。当時の面影を随所に残す館内には、レストラン&バー、カフェ、複数のギャラリーが入居し、今日では観光客も覗きに立ち寄るほどに知られた人気スポットへと生まれ変わった。

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歴史を感じさせる、色褪せた階段とその手すり


もちろん、建物の一部は改装されているが、当時の面影を色濃く残している。例えば、モザイクタイルのアートが施されたエントランスや、色褪せたコンクリートの階段。レトロな佇まいだがどこか重々しくもあり、その歴史に想像が膨らむ。

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体育館を改装したダイニングホール。壁に飾られたアートは購入もできる


エントランスを抜けた1階には、モダンドイツ料理を出すレストラン&バー「パウリー サル(Pauly Saal)」がある。体育館を改装したダイニングホールは天井が高く、教会のような厳かな雰囲気が漂う。

若干31歳のヘッドシェフ、アルネ・アンカーさんが手掛ける、旬のローカル食材を使い、世界のさまざまな食文化からヒントを得た料理をコースで提供。さまざまな味、そして食感を持つ食のピースが調和する、コンセプチュアルな1皿がテーブルに並ぶ。

メインダイニングの他に、夜のみオープンするバーを併設。こちらもアンティーク調の家具を配置する、ムードたっぷりの空間だ。同じ1階フロアには、終日オープンするカフェ「Mogg & Melzer」がある。こちらはコーヒー1杯から利用できる、アメリカンスタイルのカジュアルな店。

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集会所だった場所を利用した展示室


建物の上階には、3つのギャラリーと1つのミュージアムが集う。そのひとつ、近・現代アートを紹介する「ミヒャエル フクス ギャラリー(Michael Fuchs Galerie)」は、集会場として使われていた広い空間と、教室だった2部屋を改装したギャラリー。当時、女学生達が行き来していたであろう廊下が、2つの展示スペースを繋ぐ。

元アメリカ合衆国大統領、ジョン・F・ケネディに関する資料を集めた「ミュージアム ザ ケネディ(Museum THE KENNEDYS)」も、一見の価値がある。1963年、まだ、街に東西を隔てる壁があった時代。西ベルリンに訪れたケネディ元大統領は大観衆を前に演説を行い、「Ich bin ein Berliner(私はベルリン市民である)」という歴史的な言葉を残し、困難な時にあった市民を勇気づけた。ミュージアムではそのベルリンゆかりの人物にまつわる写真、映像、遺品などを展示する常設展と、ケネディ家に関連する企画展が随時開催されている。

この他に、写真をはじめ、絵画や彫刻などの現代アートを紹介する「シーダブリューシー ギャラリー(CWC GALLERY)」、ドイツの南西部にある都市、バーデン=バーデンにある近・現代アートを扱う「フリーダー・ブルダ美術館(MUSEUM FRIEDER BURDA)」のショールーム「フリーダー・ブルダ美術館|サロン ベルリン(MUSEUM FRIEDER BURDA | Salon Berlin)」がこの館内に入居している。

時代に翻弄され、数奇な歴史を辿った女学校は、ベルリンらしいクリエイティブな発想で現代に蘇った。過去と現在の狭間にあるかのようなこの場所に流れる空気を、その肌で感じ取ってみて欲しい。

《Jun Igarashi》

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