若きブリュワーが造る、次世代のドイツビール。ベルリンのクラフトビール事情【A trip to Berlin】

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ドイツといえばビールと思われるだろうが、まったくもって正解だ。場合によっては、ペットボトルの水を買うよりも安上がりなこともあり、まさに水のようにビールをあおるドイツ人も少なくない。スーパーの棚を覗けば、じつにさまざまな銘柄の瓶ビール(ドイツは缶ではなく瓶が主流)が並んでいるし、街中のバーでも常時数種類のドラフトを置いているところが多い。

トレンディな店が急増し、ここ数年で様変わりした首都ベルリンは、若年層の間で食が一大ブームとなっている。もちろんビールも例外ではない。ビール大国の中心地に根を下ろし、新しいアイデアやデザインを取り入れたビールを製造するマイクロブリュワリーが増えつつある。そんな次世代のドイツビールについて知りたくて、ベルリンを拠点にする若きブリュワー達を訪ねた。

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「ビアファブリック(BIERFABRIK)」を運営するSanniさん、Andreさん、Sebastianさん。20~30代の若いスタッフがそろう


まず訪れたのは、ベルリンのシュペーティ(ドイツのコンビニのような商店)でも見掛けることの多い「ビアファブリック(BIERFABRIK)」。市街地の外れに工場を構える、ごく少人数で営まれるローカルブリュワリーだ。大学で微生物学を専攻していた元学生や、以前はワインメーカーに勤めていた酒類製造経験者など、それぞれ異なるバックグラウンドを持ったスタッフが集う。
「約25種類の麦芽と約20種類のホップをベースに、これまでに10種類以上のビールを商品化してきました。麦芽はすべてドイツ産のものを使用し、スモーキーで深みのあるものを選んでいます」。話をしてくれたのは、「ビアファブリック」の創設者のひとりであるAndreさん。工場での製造工程ついても説明してくれた。

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ストレージタンクから樽にビールを移している最中


1. 麦芽を計量後、それを粉砕
2. 粉砕した麦芽を50~77度の湯と徐々に混ぜ合わせていく
3. その後に濾過。この時点の液体はとても甘い状態になっている
4. ホップを投入。フレーバービールも製造している「ビアファブリック」では、このステップでウォールナッツ、メイプルシロップ、レモンなどの素材を加えることもある
5. 煮沸し、冷却後にイーストを加え発酵させる
6. 発酵後、低温でさらに寝かせる。期間は種類によるが、平均して2週間ほど。中には8週間ほどかけて味を落ち着かせるものもある

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ラベルのデザインも魅力のひとつ


「この醸造作業を週2~3回行い、1回に1000リットルを製造します。ボトリングやラベリングも手作業で行い、ラベルのデザインなどもスタッフやその友人などが手掛けているような小さなブリュワリーです。ただ、ちょっと前まではお客さんすべての顔を把握できていたんですが、最近はそうもいかなくなってきましたね(笑)」。
2013年の創業以来、着実にファンを獲得しビジネスを軌道に乗せ、現在はドイツ国内のバーや商店などに瓶ビールと生樽を卸している。また、コラボレーションを頻繁に行い、昨年はイスラエルのブリュワーとチリ(とうがらし)ビールなどを共同開発するなど、クリエイティブなチャレンジ精神も旺盛だ。


次に訪れたのは、併設する小さな醸造室で製造するオリジナルのクラフトビールを出す「シュトラッセンブラウ(StraBenbrau)」。金融業界のビジネスマンだったというオーナーのTimoさんがキャリアチェンジを果たし、ベルリン中心部のフリードリヒスハイン地区に昨年オープンさせた人気のビアバーだ。現在、スタッフは全部で12人、うち4名がブリュワーだという。

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築100年ほどの古い建物の1階を改装した店内


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ビール樽をキャリーにのせ、電車で配達するTimoさん


「週に数回、営業時間外にエントランス脇にあるシステムタンクで醸造作業を行い、バックヤードで発酵させて貯蔵したものを店頭で出しています。あと、ベルリンのバーにもいくつか樽を卸していますね。僕は車を運転しないので、タンクをキャリーにのせて電車で配達しているんです(笑)」Timoさんははにかみながらも、樽を電車で運んでいる姿を写した写真を見せてくれた。

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アルコール度数も種類によってさまざま。ラインアップはほぼ毎日変わる


麦芽にはドイツ産のものを選び、水道水はミネラルを含みすぎているため特別なフィルター水を使用している。店頭にはエールとIPAを中心に、常時約10種類以上のビールが日替わりで登場。ビールと同じ発酵技法を使うザワークラウトの香りがするビールなど、オリジナル性のあるビール造りにも励んでいる。ビジネスは順調で、醸造が追いつかない日もあるほど。ローカルに根ざしたこのビアバーを、若いドイツ人オーナーが今後どのように先導していくのか楽しみだ。

《Jun Igarashi》

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