常に “ナンバーワン”であり続ける理由。北田淳社長が語るコンデナスト・ジャパンのデジタル戦略:横井由利

Voice Voice

コンデナスト・ジャパン代表取締役社長 北田淳氏
もはや日本でも出版社のデジタル化が止まらない。日本上陸以来いち早くデジタル化に着手したコンデナスト・ジャパン。これまでの経緯を代表取締役社長 北田淳氏に話を聞いた。

■デジタル化の波

2000年11月創刊から1年後に『ヴォーグ ニッポン(VOGUE NIPPON)』のウエブサイトがオープンした。当時は、デジタルの可能性について手探り状態で、まずは紙媒体からの解放と銘打って雑誌の内容をそのままデジタルに落とし込むマガジンレプリカを始めた。しかも、iPadで見るのがスタイリッシュと思わせた。その後、動画の導入やインタラクティブな活用、デジタルだけで提供されるプロダクツを作成し販売などを進め、現在のような完全オリジナルコンテンツサイトが完成していった。

2017年2月現在、ウェブ『ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)』(2011年5月号より改名)は、媒体資料によるUU 2,300,000/月、PV 22,000,000/月という数字からもわかるように、日本版モード誌のサイトで、No.1を誇っているのがわかる。「紙媒体でもデジタルでもコンデナストは常にトップランナーでなければいけない。目指しているのはティア・ワン・デジタル・カンパニーだ。プレミアムでフロントローにい続けるデジタルメディアを目指している」と北田氏は語る。

プリント(紙媒体)で美しいビジュアルと最先端の情報を提供する媒体と評価されてきたように、デジタルにおいてもクリエーションでオーディエンスに感動と驚きを与え続けるという使命があるのだ。デジタルでは、パフォーマンスも要求される。パフォーマンスとは、数字だけではなくテクノロジーを駆使したイノベイティブな側面も持ち合わせることだ。そこがビジネスへ直結するポイントだというだけに、これまでの文化系編集者のスキルでは、対応できない時代がやってきたのだ。「デジタルにおいてもマーケットレピュテーションやクリエイティビティを向上させ『ヴォーグ・ジャパン』のコンテンツはすごいね!といわれなければ存在価値は無いに等しい」と北田氏は語彙を強めた。

コンデナスト・ジャパンは、2013年に開催したプレスカンファレンスで本格的なデジタル化に向けて、プリントとデジタルの八つの柱を提示し会社運営や組織の変革を打ち出した。3年半過ぎた現在はデジタル環境も変化し、デジタルマガジンやアプリの開発は姿を消していた。その理由として、デジタルマガジンもアプリも一部のオーディエンスとクライアントのニーズしかなく続ける理由がなかったからだという。

「2013年の時点ではSNSも視野に入っていたが、今のように力を持つとは思っていなかった。今、デジタルチームは、Facebook、Twitter、LINE、Instagramに最適な情報を分散して投稿し成長させようとしている。しかもSNSでもマネタイズができるようになってきた」と、北田氏はいう。デジタルの世界では、何が今インで何がアウトかというのはデイリーベースで変化し、そのスピード感を感じながらジャッジしていかなければいけないのだ。


■ニュービジネスの創出 

コンデナスト・ジャパン社は「ナンバーワン・プレミアム・マルチメディアカンパニー(唯一無二の特別なプリントもデジタルも手がける出版社)」と自社を表現しその任を達成してきた。ところが、プリントとデジタルを扱う出版社というだけでは、ビジネスの成長にいつか限界がくると判断し、幼虫から成虫に変態していくように、時代に即した会社形態の変革を行おうとしている。「フレーズとしてはまだ完成していないが、コンテンツ・マーケティング・エージェンシーというのかーー。形態のイメージはできているのだが」と北田氏はいう。

企業はそれぞれ、自社サイト=オウンドメディアを持つ時代になってきた。マスメディアに頼らなくても情報を発信することができるようになったのだ。ただデジタルは、スタートすると毎日更新しなければその機能を十分に発揮することができないといわれている。不変的な資料価値のあるものは、図書館のように訪れる人を待てばいいのだが、その情報を必要とする人は限られている。情報化社会に生きる現代人には、より新しい情報をより早く入手できるのが当たり前の時代になっているからだ。

コミュニケーション・スキルを持つメディアとして、コンデナスト・ジャパンがこれから取り組もうとしているニュービジネスは、メディアの蓄積したノウハウとスキルを生かして、依頼された企業の情報を最大限最大化するというビジネスだ。例えば、SNSで何時に何本コンテンツをポストすればいいか、最新のテクノロジーを駆使した情報発信法などなど、メディアのプロフェッショナルな領域を生かしてサポートするビジネス展開に力を入れていく。デジタルにおいてもパーセプションとハイクオリティがコンデナスト社の生命線だということだ。「最先端のテクノロジーでコンデナスト社で最適だと判断したものをどこよりも先に使ったという事実が大事だ」と北田氏はいう。


■デジタル時代のグローバル企業

合同会社コンデナスト・ジャパンは、アメリカのコンデナスト社を中心にしたグループ会社だ。海外に本社を置く企業は、本社の意見に追従するのが当たり前だった。ところがコンデナスト社のグループは、デジタルの特性を最大限に生かして、文化や思想が違う国々が集まったグループだからこそ、ローカルオトノミーを認めるという考え方を採用し、効果をもたらしているという。デジタルの全てを支配する企業は未だ無い。ならば、それぞれの国で試行錯誤した結果をシェアし、国同士がコミュニケーションをとり、新しいものに挑戦しようという企業文化がもともとあった。その結果、最新デジタル情報を世界中のグループから入手できるようになったのだ。

「日本の出版社は日本で解決する手立てしかないが、ジャパンで何か課題が見つかると、グループに投げかけることにしている。必ず先にブレイクしている国からの解決法が示される。そこが、圧倒的にアドバンテージだと思う。デジタル時代には国境はないのだから」と北田氏はいう。しかも、コンデナスト・グループの間で、世にでる前の生情報を交換できるというから、モードばかりかあらゆるジャンルで他国では何が動いているか知ることができるのだ。『ヴォーグ ジャパン』が常にナンバーワンであり続ける理由はそこにあるのだろう。

日本の出版社がデジタル化に遅れをとっているのは、トップダウンをせず、デジタル化が全社、全スタッフのミッションにならない体質にあるからだと北田氏は分析する。

日々更新されていく情報とテクノロジーの進化によって、長期的なビジョンを示しにくくなっているのは確かだ。そうしたハードな世界で、正解を求め続けるのが「今」なのだろう。


※ティア・ワン・デジタル・カンパニー=Tier1とは階層1を意味する

《Yuri Yokoi》

関連ニュース

特集のニュースをみる

PCサイト