未来に繋ぐ、サプールの教え「ファッションで世界を平和にすることが出来るのなら」【INTERVIEW】

2016.08.24

ファッションで世界を平和にすることができるか」。そうストレートに問われたならば、あなたはなんと答えるだろう。

から遠く離れたアフリカ、コンゴ共和国には一分の迷いもなく「YES!」と即答する集団が存在する。既にご存知の方も多いであろう、世界中のファッションメディアを騒がすサプールSAPEUR)だ。

FASHION HEADLINEでは、彼らを写真集『THE SAPEUR~コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン』で日本に紹介したフォトグラファー茶野邦雄氏を招いてファッションシューティングとともにインタビューを行った。

「サプール」とは「サップ」と呼ばれる人々の集まりで、サップとはフランス語で「エレガントで高貴なムードを纏った集団」という一文の頭文字を取ったもの。

彼らはその言葉を身をもって表す。ある者はヴィヴィッドな原色のスーツを纏い、またある者はクラシカルな礼服に身を包む。そして、街頭へと繰り出し、独自のステップでダンスする。サービス精神旺盛なエンターテイナーであり、規範意識の高いリーダーでもあるのだ。

彼らの衣服に共通しているのは、民族衣装ではなく「洋服」であるということ。独立前は長らくフランスの領地だったコンゴ共和国。実はこのことが「サプール」を生むきっかけでもあった。

「昔はフランス人と働くこと自体が特権的で、市民の羨望の的でした」と、語るのは「サプールの法王」と称されるイヴ・サンローラン氏(サプールたちは本名とは別にサプール名を名乗る。この名は偉大なデザイナーに敬意を示しているという)。

「祖父、父ともにフランス人と働いていました。彼らと働くのですから、当然身なりにも気を使うんです。子供の服装もきちんとさせる必要がありました。だから、“世襲”というわけではありませんが、小さい頃から着飾ることが好きでしたね」

フランスのブルジョワ的な文化が、アフリカ特有の明るいムードとミックスされて、サプールという集団が生まれたわけだ。もっとも、発祥当時は世間から白い目で見られることもあった。平均月収3万円と言われているコンゴの実情を鑑みると無理もないだろう。しかし、今では世界中のファッションラバーから、平和の象徴と見なされている。

サプール歴43年で、本国でも「大サプール」と慕われるムィエンゴ・セヴラン氏はこう語る。

「サプールは徹底して暴力を排除します。コンゴ周辺では内戦も続いている状況です。私の願いはコンゴ共和国だけではなくて、世界中すべての人がサプールになること。そうすれば、戦争なんてあっという間に終わってしまうはずです」

教育の大切についても語った彼は、このままコンゴの子供たちが勉学に励み、定職に就き、サプールの教えを守ることで、いつか本当にそういう未来がやってくると信じている。

「サプールが守るべきこと。これは別に箇条書きになっているわけではありませんが、みな自ずとこの教えを守り、次の世代に繋いでいこうとしています。それは、清潔であること、誰にでも優しく接すること、徹底して非暴力であること、そして平和を願うこと」

ファッションを愛するならば、誰だってサプールの一員だ。そしてその教えを守ったら、果たすべき責務がある。それは、いつもよりおしゃれして出掛けること。「今日の服、いいね」と言われたら、彼らのようにステップを踏んで応えよう。

【写真集】
タイトル:THE SAPEUR~コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン
著者:茶野邦雄
出版社:オークラ出版
価格:2,700円

写真展
タイトル:アフリカ大陸コンゴの世界一おしゃれな紳士“SAPUER(サプール)”写真展
日時:開催中~8月31日
場所:沖縄県沖縄市久保田3-1-12
プラザハウスショッピングセンターフェアモール3F ライカムアンソロポロジー
入場料:500円(中学生以下無料)
森下隆太
  • サプールは、おのおののスタイルをもってオシャレを愉しむ
  • 伊勢丹メンズ館の紳士靴コーナーで靴を手に取るサプール
  • 来日時、伊勢丹メンズ館でステップを踏むサプールたち
  • 写真家・茶野邦雄による写真集「THE SAPEUR~コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン」は、オークラ出版より発売中(2,700円)
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