ファッションとリテールに新風を吹き込むスタートアップを探せ!Decoded Fashionレポート--2/2

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スタートアップコンペティション「ISETAN CHALLENGE」の表彰式
  • コンペティションで1位に輝いたメモミのプレゼンテーション
  • ファッションとリテールに新風を吹き込むスタートアップを探せ!Decoded Fashionレポート--2/2
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ファッションとテクノロジーが出合う場として2012年に設立されたDecoded Fashion。同サミットでは、スタートアップ・コンペティションと称して、ファッションとリテール界に新風を吹き込む、世界のスタートアップ企業を発掘する場を設けている。先月開催されたアジア初のDecoded Fashion Tokyoでは、三越伊勢丹がパートナーを務め、スタートアップ・コンペティション「ISETAN CHALLENGE」が開催された。

■一次審査に残ったユニークなスタートアップ企業5社

コンペティションでは、審査員と観客を前にピッチと質疑応答が行われ、ファイナリストが決まるというストーリーだ。

コンペティションでは、三越伊勢丹が抱える次の3つの課題に対して、それに対してのソリューションを提案するというもの。参加者への課題は以下の3つ。

・未来のカスタマーに向けたインストア・エクスペリエンスの構築と、エンゲージメントを高めるアイデアとは?

・カスタマーに、より豊かなインストア・エクスペリエンスを提供するためのデータ活用法とは?

・革新的で先駆的なテクノロジーを用いた、インストアでのカスタマイゼーション、あるいは商品開発のアイデアとは?

この課題に対してのソリューションを提案する国内外約40の応募から選ばれた海外3組、国内2組のファイナリスト。会場では、審査員と観客を前にピッチと質疑応答が行われ、ファイナリストが決まるというストーリーだ。

審査員は、三越伊勢丹ホールディングス代表取締役大西洋氏、同社秘書室付特命担当北川竜也氏、コンデナストジャパン社長の北田淳、『GQ JAPAN』編集長鈴木正文氏、ハートキャッチ共同創設者兼CEO西村真里子氏の5人。

最初に登場したのは、「ブルーフォックスターゲット(BLUEFOX TARGET)」。彼らは、携帯電話から発するWiFiの電波を検知して、店舗に訪れた顧客に情報発信するサービスを提供している。そのデータをリアルタイム分析することが可能で、ブラウザの検索履歴などのデータをリアルタイム解析しながら、それぞれの顧客に応じたクーポンを発行したり、デジタルサイネージで適切な広告を表示したりすることができるという。同社によれば、アメリカのレストランでは、顧客に応じてメニュー表示を変えるといった試みを行い、好評だったとのこと。また、この機能を使いショップの販売スタッフがどの程度、接客したかなどのデータを取得したり、ショーウインドウに立ち止まる人のデータなどからそのウィンドウの効果測定を行うことも可能だという。

次に登場したのは「エレクトロルーム(ELECTROLOOM)」。同社が開発した3Dプリンター「ELECTROLOOM」は、入力されたデザインデータから、3Dプリンティングによりその場で服を作るという機器。この製造方法が実現すれば、紡績や撚糸、織りも不要なテキスタイルや、服の製造過程を根本から変えるユニークなアイデア。オンデマンドで完成品ができるため、在庫リスクもなくなる。まだまだ実験段階だという同社は、パターンのシンプルなスカーフ、ソックスといった小物から始め、将来は、洋服のカスタムデザインも可能にしたい、と語った。

日本から参加した「アベジャ(ABEJA)」のプレゼンテーションは、リアルタイムで店舗内の行動データを取得し、販売促進につなげるソリューション。
現状の小売店の課題としてスタッフの適切な配置が挙げられる。そこで同社では、店舗内での顧客行動を映像解析やヒートマップのテックを用いて、年齢、性別を推定する。結果、多くの顧客が手に取った商品を把握するなどして、販売スタッフが介入する最適なタイミングを提示し、販促につなげるサービスを提案する。また、POSデータ、CRMデータなどと組み合わせ、顔認証技術で顧客を認識し、決済をするなど、これまでにないサービスの可能性も模索している。

「インセクトマイクロエイジェンシー(INSECT MICRO AGENCY)」インセクトマイクロエイジェンシーが提案したのは、デジタルサイネージを使って、インストアショッピングにいっそうのエンターテインメント要素を付加するソリューション。店舗に来ることを旅行になぞらえ、例えば新宿店に設置した高解像度のスクリーンでパリの店舗の様子がのぞけるといった体験を提供する。イメージは、日本人ならおなじみのドラえもんの「どこでもドア」。デジタルのコミュニケーションだけでなく売場と顧客をつなぐ試みも視野に入れる。

最後に登場したのは「メモミ(MemoMi)」。メモミは世界初のバーチャルフィッティングプラットフォームを提供するサービス。顧客が、鏡のような大型スクリーンの前で一回転すると、その姿を360度から撮影できる。そのデータを使い、実際に着替えることなく、他の色やデザインのファッションを試すことができるというもの。また試着した画像を友人、家族などとSNSでシェアすることもできる。店舗側にとっては、店内では、どんなアイテムを試着する顧客が多いかなど、顧客動向に関するデータを収集することができる。またクラウドベースなので、例えば東京で試着したアイテムをもう一度、京都で見ることもできる。現在、アメリカではニーマン・マーカスの複数の店舗でも導入されている。

当初は、この5社から1社を選ぶ予定だったのだが、どれも興味深い提案で、1社に絞り込めなかったと、審査員からうれしい悲鳴が上がり、結局3社が三越伊勢丹で発表の場を得ることとなった。

1位には、お題である「インストアにおけるカスタマーエクスペリエンス」という点で、もっとも革新的だったと評価され、メモミが選ばれた。この受賞にあたってDecoded Fashionの創設者であるリズ・バセラーは「アメリカでは、店舗やショッピングモールはどうすれば顧客が店頭に足を運んでくれるのか模索しています。でも、日本の店舗はわくわくするような美しい場所で、顧客は店舗に行くことを楽しんでいますね。メモミは、テクノロジーを通じて、より一層店舗の魅力を引き出してくれるはずです」とコメントしている。

2位にはエレクトロルーム。3Dプリンティングを使ったまったく新しい服作りへのアプローチが評価され、想像力を刺激されると審査員。3位のアベジャの受賞理由は、すでにどこにでも設置されているカメラが、百貨店という場所を間違いなく改革するということ。

インストアにおける魅力を高めていくことは、リテールの関心事の一つ。そのためにテクノロジーがどのようなソリューション、そしてイノベーションを与えてくれるのが楽しみである。ことさら、リテールテックにまさにこれから向き合おうとするファッションストアが、今回のコンペティションのパートナーであることも興味深い。

そして上記の3社には、8月26日から伊勢丹新宿店で開催される「彩り祭」で展示、発表の場が提供される。どの受賞者のソリューションをとっても、一歩踏み込んだ新しいショッピング体験を期待させるもの。このテクノロジーを9月1日まで伊勢丹新宿店でプレゼンテーションを行う。ぜひ店頭に足を運んで、その風を肌で感じたい。

《飯塚りえ》

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