ファッションとテクノロジーの出合いを創出するDecoded Fashionレポート--1/2

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新しいもの、楽しいことはどんどん取り入れるはずのファッション業界。とはいえ、それが最先端のテクノロジーだとしたらどうだろう…。これからのファッションを牽引していく世代にとって、オンラインショッピングなど、今や当たり前のこと。さらに、海外に目を向ければ今や名だたるファッションブランドが、最先端のテックを利用した新しいマーケティング戦略やショッピングの仕組みを利用して、イノベーションを起こしている。

そのファッションとテクノロジーが巻き起こす旋風がいよいよ日本にも到来する時が来た。先頃、ファッション×テックの先駆的イベントとして注目される「Decoded Fashion」が、日本で初めて開催されたのだ。ここでは2回に渡ってレポートしよう。

2015年7月9日に東京アメリカンクラブで開催された「Decoded Fashion(デコーデッド・ファッション)」は、ファッションやビューティで業界をリードする企業やブランドと、テックの分野でユニークなサービスを提供するテクノロジー業界の企業を結ぶグローバルなイベント。

創設者のリズ・バセラーはコロンビア大学でジャーナリズムを学んだのち、報道番組のプロデューサーとして活躍。オバマ大統領の当選演説を扱った特別番組では、優れた番組に与えられるエミー賞にノミネートされるなど敏腕ぶりを発揮。その後、2010年にテック企業に転職し、翌年「Decoded Fashion」を設立。2012年には、最初のサミットがミラノで開催され、その後、ニューヨーク、ロンドンに広がり、今年、日本上陸を果たした。

設立当時、テック企業に勤めていたリズは「ユニークなアイデアを持つスタートアップ企業のオーナー達と出会い、彼らがファッションに使えそうなアイデアを持っていた」と言う。ファッション業界にどのような問題があって、どのような提案ができるのか分からなかったというが、テクノロジーとファッションが出合うべき時が来たと感じたのだという。一瞬、錯覚するが、これは日本の話ではない。外の人からは意外に思えるかもしれないが、ファッション業界はどこの国でも、けっこう保守的なのだ。

とにかく、リズの働きによって、テックとファッションは出合うことになった。『WIRED』の若林恵編集長も「(Decoded Fashionは)この取組みによってふたつの、互いに未知の業界の人びとがFace to Faceで遭遇できる「空間」をつくったのが素晴らしい」とコメントしている。

グローバルリサーチ企業「スタイラス(Stylus)」のリテール部門を率いるケイティ・バロン氏は、アフターインターネットである現代において、消費者の行動を考える時のキーワードを3つ挙げている。「ソーシャライズド」「パーソナライズド」「リスポンシブ」がそれだ。このキーワードに沿って、具体的な事例を見てみよう。

■「ソーシャライズド」

ブランドにとって、インターネット上で確固たる地位を築くには、自分たちの商品、ブランド、ショップ等々がオンライン、オフライン問わず語られていることが大切だ。店舗やプロダクトの良さもさることながら、オンライン上でもそのブランドの存在感があるかどうかとも言えるだろう。それはつまり顧客とブランドが、ブランドが提供する価値を共有しているかどうかという意味でもある。ブランドの持つプロダクトやストーリーといった価値にいつでも、どこからでもアクセスできることにより、ブランドは、オンライン、オフライン共にコンテンツを通じて顧客の購入を促すことが出来るということだ。実際の店舗のみならず、オンラインでもブランドのプロダクトやストーリーに出合えるということは消費者にとってみれば、これまでよりもずっと簡単に「お気に入り」にたどり着けるということだ。

そして、ソーシャルな場にブランドがコンテンツを提示する時に忘れてはならないことがある。ロンドン発のスキンケアブランド「ロディアル(RODIAL)」の一例から考えてみよう。ロディアルでは、アメリカのファッションモデル、カイリー・ジェンナーをグローバル・アンバサダーに任命した。そして、彼女をロンドンのショップに招き、その様子をソーシャルメディアでレポートしてもらった。ここで大切なのはカイリーが元々、このブランドを気に入っていたということ。ブランドのCEO、マリア・ハッツィステファニス氏は、「消費者は、そのアンバサダーが本当に製品を気に入っているのか(あるいは宣伝なのか)をかしこく見抜く」と言っていたのはとても印象的だった。ブランドは、ソーシャルメディアでのレポートだとしても、そのコンテンツが真実であるのかと顧客から関心を寄せられていることを忘れてはいけないということだ。

■「パーソナライズド」

テクノロジーは、顧客とのコミュニケーションや販売の方法だけでなく、実際のモノ作りのスキームにも変化を与えようとしている。

ニューヨークの真ん中に工場を持ち、イヤホンのオーダーメードを行う「ノーマル(NORMAL)」の創業者ニッキ・カウフマン氏は、自分の耳に合うイヤホンがないことに嫌気がさして、自分で会社を作ったのだという。ノーマルでは自分の耳のサイズにぴったりのイヤホンがたった2時間半で出来てしまう。これを可能にしたのは、3Dプリンターのテクノロジーだ。事業をスタートして1年後、顧客のデータから左右の耳の形が違う人が少なくとも20%はいるということも分かった。次の展開に活かせるデータだ。カウフマン氏は、「3Dプリンターを使って、大量生産ではなく、“あなた“のために作ることができるようになった」と言う。

これはイヤホンの例だが、スタートアップ企業の中には、3Dプリンティングの技術を使い数時間でオーダーメイドのアイテムを作るシステムを構築しようと試行錯誤している企業もあった。まだ実現はしていないものの、テックによってアパレルのオーダーメイドが身近になる可能性は十分にある。この潮流が可能性を感じさせるのは、ここ数十年来変化の乏しかったファッション業界のスキームに風穴を開けるかもしれないということ。自宅にいながらにして、オンライン上で自分好みのファッションアイテムをオーダー出来る日がそう遠くない未来にやってくるかもしれない。

■リスポンシブ

テクノロジーとファッションが出合えば、変わりやすい顧客の欲求にこれまでよりもずっと早く答えることができるだろう。

例えば、「ハウスオブホーランド(HOUSE OF HOLLAND)」では、メンズコレクションでテクノロジーを使った新たな取組みを行った。VISAカードと連携して、ショーを見た顧客がパーソナルオーダーを入れられるスキームを整えたのだ。これまでショーが終わり、セレクトショップなどのバイヤーがオーダーをして、店頭に商品が並ぶという流れだったのが、顧客が直接欲しい商品をオーダーすることが可能になり、欲しいアイテムが顧客の元に届くまでの時間を短くすることができたのだ。

また、デジタルが可能にした膨大なデータから顧客の興味関心を読み解いていくことも、今まさにその顧客が知りたいと思っている情報を届けることに繋がるだろう。パーソナルな興味関心をSNSやサイト上での行動からかなり正確に導きだすことが可能になるだろう。

新しいもの好きと言われながら、歴史や伝統を慈しみ感性がモノを言うのがファッションの世界でもある。そのせいか、ビジネスのやり方自体が、旧態依然としているところもある。しかし確実に顧客はオンラインの世界でテクノロジーを享受し、コミュニティを構築している。

アメリカでは以前から1980年から2000年の間に生まれたミレニアル世代が消費の中心として注目されて久しい。この世代にインターネットやデジタルテクノロジーは生まれながらのインフラ。


ファッションの世界で働く私たちもそこに趣いて、顧客に思いを伝えられれば、双方にとって幸福な出会いがあるはずだ。テックによって蓄積される膨大なデータは、どこに顧客がいるのか、どんな風にそのドアをノックするのか、必ずや教えてくれるはずだ。

《飯塚りえ》

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