Retail Revolution スマートフォンとデジタルがもたらすリテール・テクノロジーの未来【SXSW vol.4】

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リテール・テクノロジーは、今年の「SXstyle」で、もっとも大きなセッション・テーマだ。

リアル店舗の顧客体験が、モバイルとデジタルの力でどう変わっていくかという内容を、テクノロジーカンパニー、ファッションブランド、百貨店、雑誌社、ベンチャーキャピタリスト、リサーチ会社など、様々ななカテゴリの人がディスカッションしていた。

スマートフォンはWEB上での顧客接点としてだけでなく、実店舗においてもデジタルサイネージやビーコンなどと連動した接客ツールになるばかりか、決済ツールとしても機能する。その結果、一人の顧客の関心や購買情報がEC、WEB、店舗とシームレスに統合されていく。そんな未来に、店舗デザインや店内のデジタルツール、モバイルのアプリやコンテンツ、webサイトやECサイトなど、立体空間を横断して展開されるメディアアプローチの設計が、より重要になるだろう。

■リテールテクノロジーをインキュベーションする

「Simon Ventures Group」はリテールテクノロジー分野への投資に特化したベンチャーキャピタルだ。昨今、注力しているカテゴリーは、パーキングテクノロジー、エコエネルギー、ファッションテック、リテールテックなど。既存のリテールのカテゴリーにテクノロジーを掛け合わせることで、あたらしい価値を創造することが狙いだ。

また、前述の英国の百貨店「ジョン・ルイス(John Lewis)」では近年IT部門への投資を大幅拡大している。CIOの採用とITエキスパートと呼ばれるデジタルの専門職を外部雇用し、マルチチャネルでの顧客サービスを強化している。リテールテックのスタートアップへの出資を目的とした「J-LAB」というインキュベーション部門を設置している。

小売業がデジタルマーケティング・ラボを持つ例が増えている。米国の百貨店「ニーマンマーカス(Neiman Marcus)」の「イノベーション・ラボ(iLAB)」もその一つだ。iLABでは、リテールテックのトライアルを数多く行っており、一つのプロジェクトを少数店舗に期間限定で試験導入し、効果があれば展開店舗を広げる形で、大小様々な規模のIT企業と実験を行っている。

「iLAB」によるリテールテックのトライアルとして、婦人靴売場に「Interactive Touch Table」とよばれる32型4Kハイビジョンモニター付きのテーブルを設置している。タッチパネルで店舗とオンラインストアの在庫を同時検索でき、自分のウィッシュリストにお気入りのアイテムを追加したり、商品リンクをE-mailで送信することが可能で、靴のサイズ欠品による機会損失を軽減できる。

■ビーコンの光と影

リテール・テクノロジーのもっとも注目のトピックといえば、ビーコン(Beacon)を使ったアプローチだ。小売業において、ビーコンにはものすごい期待が寄せられているし、これからできる商業施設には、あたりまえにビーコンが設置されるようになるかもしれない。それでも、現状はビーコンを店舗のいたるところに設置するコストに足踏みする企業が多い。また、ビーコンから発信したクーポンや情報を受け取るためのアプリを、あらかじめ消費者がスマートフォンにダウンロードしておかなければならないところも、大きなハードルになっている。

そんな中、ニーマンマーカスが昨年のクリスマスシーズンに行ったクーポンキャンペーン「Holiday Pass」は秀逸だ。これはiPhoneにあらかじめ入っているPassbookアプリとiBeaconを連動して、店舗内でiBeaconを使って顧客にスペシャルなクーポン配信するしかけだ。Passbookを活用することで、自社のアプリをダウンロードしていない人にもクーポンを配信することができる。

ビーコンを使わずに、店頭環境とを活用したプロモーションの事例も登場している。

イギリスの「Mood Media」は、店舗のサイネージや音響システムを作る企業だ。このMood Media と、音楽検索アプリのshazamが共同で「shazam in store」というサービスをリリースした。このサービスは、店舗内で顧客がshazamを使うと、店内のオーディオシステムと連動して特別なメッセージやクーポンを顧客のshazamアプリに届けることができる。Beaconをつかったマーケティングと同じような効果を、すでに顧客が持っているshazamアプリで行うことができるため、新たにリテールがアプリを開発する必要も、顧客に専用アプリをダウンロードしてもらう必要もない。もともと顧客が利用しているshazamのサービスと店舗環境を融合させたスマートな事例で注目を集めていた。

店舗での買い物という経験が今のカタチになって百数十年、ほとんど変化のなかった世界に、デジタルが大きな変化をもたらそうとしている。

スマートファブリックのような、新しいファションのモノづくりも、すべては産業革命からはじまった進化の延長線上の出来事ともいえる。デジタルと共に、刻々と変化する人々のライフスタイルに寄り添いながら、ファッションが未来に向かっていくには、デザインとテクノロジー、マーケティングなど、多様なジャンルの人々の協業が必要だ。

《SIMONE INC. PLANNING DIV.》

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