H&Mと文化ファッション大学院大学の共同プロジェクト2/2--ファッションを通して人生にかかわる【INTERVIEW】

2014.11.13

――最終審査では、デザイナーの椎尾絵里子さんとパタンナーのチョン・ジャウォンさんのチームによる作品が最優秀賞に選ばれました。どんな点を評価したのでしょうか?

ペテル(以下P):ファッション性と機能性の観点から見て、彼らの作品はレベルが高かったですね。伝統的な侍の衣装をベースしながら、都会的なストリートウエアに仕上げていました。パターンやシルエット、カラーからもリサーチの結果を垣間見ることが出来ました。実は最終審査の前に、H&Mパタンナーのリサがパタンナーの視点で審査していたのですが、彼女もやはり椎尾さんとジャウォンさんの作品を選んでいましたね。

沼田(以下N):彼らは最初の段階からコンセプトが明確でした。伝統的なデザインをベースにモダンな洋服を作る場合、どうしてもキッチュになりがちですが、それを高い次元で表現し、最終的にファッショナブルな作品に仕上げていました。プリントや縫製の完成度も高く、レギンスはシームレスなホールガーメントニットを採用するなど、技術的にもレベルが高かったですね。シャツの背面にアクションプリーツを入れたり、スリーブの継ぎ目にニットを使うなど、一見装飾性が強いのですが、実は身体が動きやすい構造になっているところも高評価でした。

――学生とのやりとりで印象に残っていることはありますか?

P:アイデアや技術面など、興味深い提案が多く、全体的なレベルは高かったといえます。みなさん気でプロジェクトに取り組み、優勝のために頑張っていました。

――プレゼンテーションはいかがでしたか?

P:英語でのプレゼンテーションがあったので、言葉の問題も多少ありましたが、プレゼンテーション能力は、就職した後に学ぶことができます。私達デザイナーは良い服を作るだけでなく、アシスタントの育てることも仕事の一つ。その一環として、プレゼンテーションやコミュニケーションスキルについても教えていきます。

――学生時代に学んでおくべきことは何でしょうか?

P:真面目に勉強して、様々なことに好奇心を持つことが大切です。学生時代に記憶に残っているのは、チューターから「最終的には編集しなければならない」と言われたことです。つまり、やりたいこと、やりたくないことなどたくさんのことを自分の中で整理していくことが重要です。例えば、多くのアイデアがあることは良いことですが、最終的には取捨選択して、削ぎ落としていかなければなりません。今回の優勝者もコンセプトを明確にすることで、強いメッセージ性を打ち出すことが出来たのです。

N:自分なりの楽しむ方法を見つけることですね。僕の場合、H&Mという大きな企業のデザイナーとして働き、デザインした洋服が多くの消費者の手に渡ります。ファッションを通して、その人の人生に少しでもかかわることが出来ることは感動的です。それがモチベーションとなり、一つひとつの仕事に納得しながら取り組むことが出来るのです。学校卒業後、とても長い期間働くことになります。ファッション業界の場合、毎シーズン新しいものを作り続けなければならない。だからこそ、自分なりの楽しむ方法を見つけて欲しいと思います。

――お2人がもし、今学生で日本にいたら何をしますか?

P:私の場合は、留学生ということになりますが(笑)。日本の伝統的な衣装を学びたいですね。西洋とは違い、日本の衣装はプリントやドレープを多用している点がユニーク。ここ最近のメンズ市場では大きなシルエットを描く服やドレープを使った服が求められているため、日本の伝統的な衣装を学ぶことで、より現代的な服が作ることが出来るようになると思います。

N:日本の大学で油絵を学んでいた頃は、真面目に勉強をしていたので、遊んだ記憶がありません。ですから、もし学生に戻れるとしたら、学生生活を謳歌したいですね(笑)。

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石間京子
  • 優勝作品
  • 審査の様子
  • 審査の様子
  • 左から、優勝作品、準優勝作品
  • 優勝チームのデザイナー椎尾絵里子さん(右)
  • 準優勝チームのデザイナー細山田直人さん(中央)とペテル・クルーセル氏
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